約束・後編
「隊長……」
部屋に戻ったマリアは、ベッドに座っている大神に声をかけた。そして、少し離れ
て座った。
大神は、マリアの近くに近寄った。マリアは逃げようとはしなかった。しかし、緊
張しているのが一目でわかった。大神はそれに気がつくと、そばに座ったままマリ
アを見つめた。
「隊長……」
マリアが、大神を呼び、抱きついた。
「わたしは大丈夫です…」
そして、そっと瞳を閉じた。大神は、その唇にそっと口付けた。
「マリア、愛してる…」
そして、軽く体重をかけ、マリアをベッドに倒した。そして、そっとマリアのバス
ローブを脱がせ、床に落とした。
「大神…さん…」
マリアが大神の名を呼んだ。大神は、マリアを安心させるように、何度も口付け
る。
そして、マリアが力を抜いたのを見て、首筋から胸へと唇を滑らせた。
大神の手が、マリアの柔らかな胸を、壊れ物に触れるようにやさしく包み込む。大
神は、微かに震えるマリアに気を使いながら、胸の突起をそっと口に含んだ。マリ
アの身体が大きく震える。声を押さえようとして、マリアは、自分の手を口に持っ
ていった。大神は、あえてその手をもぎ離そうとせず、右手でマリアの身体をたど
っていった。そして、足の間に手を差し入れ、誰も触れた事のない部分に触れた。
マリアは、反射的に足を閉じようとしたが、大神の手がそれをやさしく押し止め
た。そして、口に当てている手も外した。
大神は、マリアの上げる甘い声を聞きながら、指をそっと差し入れた。その途端、
大きくマリアの背がしなる。
「マリア…、大丈夫…?」
心配そうにたずねる大神。マリアは答えなかった。しかし、つらそうな表情と息遣
いが、マリアの状態を物語っていた。大神は、マリアの身体を慣らそうとして、で
きるだけやさしく愛撫を続けた。
「大神…さん…」
マリアの声を聞き、大神はもう1本指を増やした。今度は、少し慣れてきたせい
か、マリアもさっきほどつらそうではなかった。
マリアの身体を十分に慣らしてから、大神は、マリアの足の間に身体を移動させ
た。が、これからの行為に不安の色が隠せないマリアを見て、少し躊躇した。
マリアは、そんな大神に気がつき、言った。
「隊長…、いえ、大神さん…。わたしが頼んだのですから…」
マリアは、精一杯微笑んで、大神に向かって手を伸ばした。
マリアのその言葉と誘うように伸ばされた手が、大神を決心させた。
「マリア…」
マリアの名を呼んで、大神はゆっくりと身体を進めた。途端にマリアの身体がこわ
ばる。
「力を抜いて…、マリア」
大神は、マリアの涙をやさしく拭い、マリアを覆うように抱きしめ、そっと身体を
動かす。
やがて、マリアの唇から甘やかな声が流れはじめた。その声をもっと聞きたくて、
大神は動きを少しだけ強めた。
「あ…、大神さん…」
マリアは大神にしがみついて、名前を呼んだ。大神は、安心させるように、マリア
を抱きしめる力を強めた。
そして、マリアは、いつの間にか、意識を安らぎの中へと手放していた…。
次の朝早く、マリアは目覚めた。自分を腕に抱いて眠っている大神を起こさないよ
うに、そっと腕の中から抜け出した。そして、服を着た。
「行って来ますね、隊長」
マリアは机の上にメモを置き、静かに出ていった。
「ここは…?」
大神は、しばらくたってから、目を覚ました。自分がマリアの部屋にいる事に気が
つき、一瞬とまどった。が、すぐに昨夜の事を思い出し、納得した。そして、マリ
アを探した。
「マリア?」
マリアがいない事に気がつき、大神はベッドから抜け出して服を着た。
「これは、マリアの…」
机の上のメモに気がつき、大神は手に取った。そこには、『先方にお断りしてきま
す。心配しないで下さい』と書かれていた。
大神は、荷造りの準備を中断して、廊下に出た。1人で話を断りに行ったマリアが
心配で、荷造りに集中できなかった。
とくに目的もなく歩きまわり、大神は、地下に来ていた。鍛錬室の前を通りかかる
と、カンナがいるのが見えた。大神は、鍛錬室に入っていき、カンナに声をかけ
た。
「トレーニング中かい?」
カンナは大神に気がつくと、トレーニングを止めた。そして、大神に言った。
「明日の準備で忙しかったんじゃないのか?」
「ちょっと気になる事があって、中断してきたんだ」
大神は答えた。
「マリアの行き先か…?」
カンナがたずねた。そして続けた。
「そういえば、マリア、最近、様子が変だったな。でも、朝会った時、何か吹っ切れ
た様子だったから、大丈夫だよ」
「俺は…本当に、マリアを置いて行ってしまっていいのか…?」
大神はつぶやいた。昨夜、2人で思いを確かめ合った。しかし、あの話を聞かされ
たマリアの気持ちを思うと、後悔が先にたった。
「大丈夫さ。きっと、マリアは隊長が帰ってくるのを待ってる」
ンナが明るく答えた。そして、少し改まった口調で続けた。
「マリアは……、もし隊長が他の誰かと付き合ったとしても、最後には隊長を許
すと思うんだ。隊長がマリアを1番に思っているって事をわかってたら。でも…隊
長に、別の誰かが出来て、マリアの事を浮気相手として見たら…あいつは、隊長を
絶対に許さないと思う。
巴里で何があっても、マリアの事を忘れないでくれ。あたいが言いたいのはそれ
だけだ。あ、浮気していいってわけじゃないからな」
大神にはカンナの気持ちがよくわかった。そして、もうマリアを傷つけるような事
はしたくなかった。巴里に行っても、日本にいるたった1人の恋人の事だけを考え
て…いつか帰ってきたらきっと…。
「カンナ、ありがとう」
大神は言って、鍛錬室を出た。そして、玄関に行き、そのままマリアを待ち続け
た。
しばらくしてマリアが帰ってきた。
「お帰り…」
大神はマリアを強く抱きしめた。マリアも、大神の背に腕をまわして抱きついた。
「隊長とわたし自身のために…、お断りして来ました」
「ありがとう…」
その後。2人はテラスで話した。
マリアは、笑顔で言った。
「大切な人を忘れるために他の方と結婚するなんて…相手にも失礼な事だと気がつき
ました。それに、そんな理由で結婚しても、きっとわたしは、隊長を忘れる事なん
て出来ません。改めてわ
かりました。だから、わたしは、隊長の事を信じて、何年でもお待ちしています」
「マリア、帰ってきたら、きっと…」
大神はマリアに誓った。
次の日。港で大神を見送る花組一同。
マリアと大神の目が合う。
「待っていますから」
「必ず帰ってくるから」
遠くなっていく船を、マリアはいつまでも見つめていた。
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